▪フィルムカメラのデジカメ化(改良、終結(?)編)

2015年12月27日公開

PENTAX LXデジカメモドキは、改良編へと前進した。今回のポイントは、本体の薄型化である。

プロトタイプはとりあえず撮れることを目標としたので、厚みに関しては妥協していたのだ。当初、NEXをバラしてバラック状態で動作させながら不要と思われるコネクションを一個づつ外していって、最小限の接続で組上げる方針のもとに動作確認したのだった。センサーゴミ取り機能やレンズとの情報伝達信号に関しては外しても問題なかったのだが、シャッターユニットがないとカメラエラーになって立上らないことが判明したために、シャッターユニットは塔載せざるを得なかったのである。他にもマイクやスピーカは取っ払っても問題なかったのであるが、やってみて初めて判明する細かな事象に遭遇したのであった。その都度部品はボツとなって、予備のNEXが何台あっても足りないことになってしまう、、、。覆水盆に返らず、、。

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元基板のサイズのままでは、LXのシルエットに収まらない

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出っ張り、ホットシューコネクタ、HMDIコネクタを削り取っている。1つとり外すごとに動作確認をしながらの作業となる。途中でエラーとなれば、ボツということである

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失敗すると、残骸の山となる。5Nも多く壊してきた

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その後、格闘の日々となるエラー

NEX-C3ブロック

ざっとNEX―C3の基板周辺は上図のようになっている。非常にコンパクトに出来ており、コネクションも少ないという印象でさすがSonyと感動したものだ。以前他のカメラも分解したことがあったが、これは設計方針が全く異なった作りであることが良くわかった。

 

元々本機の場合、シャッターはLX側で制御する方針だったので不要にしたかったのだが、NEX側では制御上シャッターユニットが必要不可欠ということで、これをダミーで搭載したことにより大幅に厚みが増えたのであった。

それでも本取り組みもプロト機としては一旦完成したので、次のテーマとしては当初に目標とし残件となっていた厚みを削減することに着手することとした。(課題は頓挫のままである)

本体の厚みを薄くするにはNEXのシャッターを取り除くしかないことは明白であり、以前から方針を立てて予備実験を行っていたのである。要は、NEXにはシャッターが付いていると思わせれば良いということで、シャッターユニットの代わりに「シャッターエミュレータ」なるものを製作し、メカシャッターの代わりに電子回路で置き換える方策を検討したのが今回の取り組みである。本来ならNEX本体のプログラムソースコードがあればソフト改造によりシャッター機能を殺すなどの方法がエレガントであるのだが、それはさすがに叶わないということで今回のような少々無骨な手段となったわけである。

エミュレータを作るにあたっては、NEXのシャッター構造と制御方法を調査せねばならないが、なかなかこのような特化した情報はネットでは見つけられず実機の観察しか方法はないのが現状である。しばらく頓挫していたので気分的に前進しなかった解析も、最近実用にまでこぎつけられたことでにわかに熱が入り一気に進展したということである。

詳細はコラムに記載するとして、実際に完成した「シャッターエミュレータ」を解析用に残してあるNEX-C3実機の本物のシャッターの代わりに接続し、レンズをつけて機能するかをテストしたのが次の動画である。結果は動作的に問題なさそうで、この動画では判別しにくいがシャッター音は当然無音である。

 

 

◇ PENTAX LX デジタルモドキ(改良、終結(?)編)

シャッター動作をエミュレートするにあたっては、まずは現行メカニカルシャッターの動作振る舞いを解析するところからスタートである。

解析には地道な作業(苦闘の連続)が伴ったが、苦労話を載せても面白くないので詳細は割愛する。概略は、以下のような実機から信号線を都度半田付けで引き出し、動作させながらオシロで波形観測するなどして解析したのである。おかげで大分老眼が進んだような気がする。

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例)シャッタ動作時のチャージモータと先幕のタイミングのオシロキャプチャ

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これらから得られた解析結果をもとにエミュレータの回路を考案し、基板として組み上げたのが次のようなものである。

電子回路シャッター

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こちらは以前紹介した、C3の実シャッター(幕は取り外しているが)

NEXの制御基板側信号コネクタは変更できないので、コネクションにはNEXのシャッターのFPCケーブルを取り外して流用している。FPCケーブルを新規に製作するには費用が膨大となるため。

シャッターエミュレータの全体回路は次のようになっている。電子回路というには全くもってシンプルな回路構成である、、。

ArduinoCircuit

エミュレータの回路、これはかなり前に考案したもので、現在はもっとシンプルな回路を採用している

 

メインのエミュレーション制御には、このような使用にはもってこいのArduinoを選定している。簡単に取り扱える制御用マイコン基板であり、プログラミング環境も安価に整っているのが理由である。こいつにシャッター動作をエミュレートさせることで、NEXにはメカシャッターが存在していると騙すわけである。制御プログラミングについては昔取った杵柄であるので、現在はかなり錆び付いたとはいえ数回のデバッグを行いなんとか完成までこぎつけることができた。ただし、マイコンは電力消費が大きいのでバッテリー消費を圧迫することが想定できる。気力が残っていれば、そのうちマイコンをPICに変えるかハードロジックに置き換えることも考えている。

実機は以下のような様子である。革張りもしてみたが、プロトよりは持った感じが良い。苦労の割には5mm薄くなっただけなのだが、液晶がなければ、かなり薄くなったという印象である。

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プロトタイプは厚さが17mmもあったので、今回12mmに収めるのがやっとであった。5mmならデータバック程度ということで満足できるであろうに。バッテリーをフィルム室へ納めているので、出っ張り分の寸法を考えると7〜8mmが限界である。

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バッテリーが大きいので、後ろへ結構出っ張る

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本体が薄くなった分、バッテリの収納が課題となる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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今回の結果

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以前ここに載せたプロトタイプ

 

 

 

 

 

 

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とりあえず、全体の薄型化を達成できたのと、電子回路なので騒音が無く、LXのシャッター音に相乗していたNEXのシャッター音を消すことにも成功しているのである。

これでいよいよ、これまで以上にフィールドに持ち出す意欲が高まったと言えよう。

ファインダーの課題は未解決だがやるだけはやった感もあり、もうそろそろこの辺りでこのテーマも終結で良いかと、、。