▪フィルムカメラのデジカメ化

2014年11月16日公開

本来これがやりたくてデジカメの世界へ入り込んだわけで、随分と色々な方面の知識を得ることとなり、それなりの出費も多大となったのだ。1年という期間を経て、ようやくこのテーマは課題を残しつつも―旦完成までこぎつけることができた。

発端はWebCamやNetCamを設置したことでイメージセンサーに興味を持ったことと、カメラに造詣の深い人物に出会ったこと、その人物がいわゆる「師匠」であり、雑談の話題の中で非常に素朴な考えを思いついたのがキッカケで、当初は簡単にできそうと考えていた。自分的には、Webカメラの中身をフィルムカメラの背面に取り付けさえすればできると思っていたのであったが、実際にやってみると色々なハードルがあることが判明して愕然としたのだった。なにせデジカメの構造や動作原理など全く知識がなかったので、まさに無謀な船出だったわけである。

さらに、もともとのターゲットとして想定していたのは所有しているフィルムカメラのPENTAX KXだったのだが、ファインダー清掃のために無鉄砲にも分解し挙句壊してジャンクにしてしまい、この企画を継続するために新たにPENTAX LXを手に入れるハメとなってしまった。さらに現在のデシカメというものがどのような構造をしているのか知る必要が有るということで色々調べるうちにデジカメ自体が欲しくなってしまい、これまた多大な出費となってしまった。

このような物はこの世界ではデジタルバックと称するらしいが、自分的にはフィルムカメラのデジタル化というカテゴリと認識している。当初この話を「師匠」にしたところ、「絶対無理、やるだけ無駄、時間と金の無駄」などと酷評されたのだが、写真に造詣の深い「師匠」にはすべてお見通しかもしれないが自分的にはこれは楽しみの一つであることだし、人にとやかく言われてやめることは本意ではないので、やれるとこまでやってみようという意気込みが気力を経続させるエネルギーとなったわけである。その後はこの話題には触れずあたかも諦めた風を装い、写真というジャンルとして「師匠」からカメラや写真の知識を教授して頂き、密かに進め様々な紆余曲折を経てたどり着いた結果である。

何も知らないのに、当初からセンサーサイズが最低でもAPS-C以上で画素数は1000万画素以上の条件を満すものを想定したので、部品取りのためのデジカメはそこそこ大型なボディとなる。しかし大きなボディのデジカメの内部の画像処理基板などは大きく、実際部品として最初に手に入れたCanon EOS Kiss DigiやPentax K-Xは大きくとてもフィルムカメラの後ろに取り付けられるサイズではなかったのだ。もっとコンパクトなものはないかと探して見つけたのはSONYのNEXシリーズであるのだが、この非常にコンパクトなボティが存在しなければ完成したかどうかわからないのだ。何せターゲットとなるフィルムカメラのボティ高は今の―眼デジカメに比べてかなり低く、同じシルエットに収めようとするとイメージセンサー髙と画像処理基板の高さを低くしなければならないからだ。幸いNEXを知って早速購入し実際に分解してみたところ、非常にコンパクトに出来ていたのには感心してしまった。NEX-5やNEX-C3などは中古機としてもリーズナブルな価格で出回っているので、部品として購入するのも最適であった。流石SONY、これで俄然やる気が生じたのだ。

ターゲットのPENTAX LXは裏ブタを加工するために壊れても悔いのないものも必要ということで、都合三台購入した。色々触っているうちにフィルム写真にも目覚めてしまったため、程度の良い個体(これは改造しない)と改造ターゲット用、及び部品取り用の三台である。

実際に完成したカメラで撮影している様子は、次の動画のような感じである。シャッターチャージのためにフィルムレバーを巻き、シャッターを切るという本来の操作感はそのままである。実際は、まだ色々課題があることは認識しているのだが、とりあえず撮れる状態にまではできたということだ。

 

PENTAX LX Digitalもどきの概要

LXデジカメもどきの外観 背中に背負っている

LXデジカメもどきの外観 背中に背負っている

当初の方針としては、

1) ターゲット本体への改造は裏蓋交換以外行わない

2) 裏ブタにデジタル部材を取り付け、交換することで動作させる

3) シャッターはターゲット側から操作する

4) シャッタースピード、露出はターゲット側の機構で制御する

 従ってNEX側はイメージセンサーが捉えた光を記録するのみ

一言で言えば、フィルムカメラ本来の操作でデジタル写真が撮れるということである。

部品に決めたNEXのイメージセンサー基板は、かなり小型に作られており裏ブタ内の寸法に十分収まることが判った。制御基板もギリギリ収まる寸法である。裏面の出っぱりもかなり薄くできそうと思われ、各部品の寸法取りからまずはスタートした。残念なことに初めてバラしたNEXはFPCケーブルのコネクタをほとんど壊してしまったため、新たに同機種を-台と更に予備でもう一台の都合三台も購入した。

これがプロトタイフ°である。

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プロトタイプは、とにかくフィルムカメラでデジタル写真が撮れることを目標とした。ある意味、単にNEXをカメラの背面に取り付け、シャッターを同期したものにすぎないしろものだが、板金もダサいがとりあえずここまで。ちなみに取り付けはカメラの背面カバーとNEXの部品を収納するためのブラケットを固定する構造だが、ブラケットは加工屋さんで製作してもらった。今は図面さえ書けば個人を相手にしてくれる加工屋さんがあるので助かるが、チョット高めのおよそ2万円。

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方針の

1)はカメラ本体に手を掛けることは本意ではないので当然である。

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2)は作業性と見てくれを重視してのことである。

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3)を実現する手段を色々考えてみたのだが、プロトタイプではPENTAX LXならではの方法となった。

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PENTAX LXのボティの背面下部には、当時データバックというフィルムに撮影日などの情報を写真と同時に写し込めるアクセサリがあり、データバックに対してシャッタータイミングを伝達する信号接点が出ていることがわかった。この信号でNEX側のシャッターを切ることができると考えたわけである。更に、この接点に直接ハンダ付けするのは方針に合わないので、カメラ業界では常套手段であるバネで押さえるピンで信号を伝達することにした。この部分の部材はカメラとレンズを信号伝達する部品が使用できそうと思い、バラしたカメラから流用したものであり、フタを閉じると接触しNEXのシャッター回路へ接続されるようにしている。

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さらに、この信号はシャッターが切れたタイミングでしかオンしないので半押し状態をNEXへ伝える手段がない。NEXはシャッター半押し、かつシャッターオンでないとシャッターが切れない仕様のようなので、別途半押しスイッチを取り付けた。シャッターへ人差し指をかけると親指の腹でプッシュできる位置に取り付けている。なお、掲載している参考動画ではプッシュスイッチを入手するまでの対応として、トグルスイッチで代用している。

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4)は現在課題が残っており、それを解決しなければならないことは承知しているが今後へ持ち越しで保留している。

現在課題解決のための方策を検討中であり、薄型化用ブラケットも新規製作中であるので、次の試作が完成した後に新たに紹介することになるであろう。もちろん、うまくいけばではあるが、、。