■ カメラシャッター製作

2020年3月8日 公開

久しぶりの電子工作である。

知人の研究用機材として、シャッターユニットの製作の相談を受け試作してみたものである。

シャッターメカを自作するのは至難の業であるので、ジャンクカメラから取り出して流用するのであれば可能性があるかなと思い、検討してみたのである。

シャッタースピードのご要望が、1/125から30秒ということで、比較的低速で良いとのことだった。それで、これまでデジカメ化の部品どりにしてきたNEXシリーズのシャッターの残骸がたくさんあるので、それでどうかと打診してみたところ、これならビハインドシャッターとしてなら活用できる可能性があるとのことで進めたのである。

 

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■ シャッターユニット製作編

 

NEXのシャッターメカは、チャージ用モータと、モータ回転位置検出部、先幕、後幕の係止め用ソレノイドで構成されている。部品どりにより、FPC基板はデジカメ化のエミュレータ用に使用済みであるので、今回は負荷部のみで動作させるべく方針を立てたのであった。

元々のデジカメ内での動作は、以下の通りである。

通常はライブビューのために後幕は開で機械的にロック状態である。

シャッター動作が行われると、チャージ駆動により先幕を閉じ係止めをソレノイドで行い、同時に後幕が開状態なら機械的に閉状態に係止めが行われる動作となる。チャージが完了すると、先幕が閉じた状態、後幕は開いて係止めされた状態となる。

その後露光は、先幕の係止めしているソレノイドを解除して走らせ、露光時間経過後後幕の機械的な係止めをソレノイドで解除し閉じる動作となる。

露光終了すると、チャージモータが動き、先幕はロックせず、後幕を機械的ロック状態として幕開状態にし、ライブビューとなる。

 

このメカを流用するのではあるが、電源ON時デジカメのように後幕が開状態がイニシャル状態ではフィルム用シャッターとしては感光を防止するため、閉状態を通常とする。そのため後幕の機械的なロックを解除し後幕を閉じておく。この状態が、通常の待機状態としなければならない。

 

レリーズ操作が行われると、チャージモータを動かし、先幕をソレノイドでロックする。

同時に後幕は開動作となり機械的にロックされる。元々、モーターを動作させると先幕閉と後幕開が同時に動作する機械的な構造であるので、露光にはならずフィルムを感光させることはない。

この状態でチャージ完了となる。

その後露光動作となる。

露光動作は、設定されたシャッタースピード(露光時間換算)に従って、先幕のロックをしているソレノイドを解除させて先幕を走らせ、露光時間経過後後幕のロックをソレノイドで解除し幕を閉じる動作になる。

この一連の動作を繰り返すことになる。

この動作を検証するために、まずは試作機を製作してみた。

NEXのメカをマイコンで制御する方針で、マイコンにはArduinoを使用し、モータドライブ素子やソレノイド制御のドライブ回路で単純に構成している。

今回シャッター幕の位置確認は使用せず、いわゆるオープンループで成り行き動作処理とし、簡易に設計してみた。位置確認などを行うと時間処理的に不利になるかもしれないとの配慮である。

バッテリー駆動にして欲しいとの要望であったので、たくさんあるNEXのバッテリーを流用している。もともとのNEXのシャッターなので、チャージモータの駆動に高い電圧が必要であることも影響している。

ただ残量検出は行っていないので、毎回充電して使用したほうがフィルム感光を考えると安全である。どこまで減ったらダメかは検証していないため。

 

試作機の動作の様子が次の動画の通りである。

 

本来なら、チャージは先にしておき、レリーズ操作で先幕後幕を動かすのが理想であるが、今回流用したシャッターメカは、先幕の係止めをソレノイドのアクティブ動作で行う構造であるため、チャージ後レリーズを待機させるためにはソレノイドに電流を流しておかねばならず、 電源消費的には不利である。後幕のように機械的に係止めが行われ、 ロック解除にソレノイドが使われる構造であれば理想である。

また、チャージ完了状態で電源を切ってしまうとソレノイドへの通電が遮断されるので、 先幕がロック解除になり幕が開いてしまうため、感光してしまう危険があるのである。

したがって、このメカ構造を流用する以上、先のレリーズ操作でチャージ動作を伴った露光というシーケンスは脱がれないということになる。

 

試作後、再製作し直して引き渡し完了。