▪フィルムカメラのデジカメ化(その3)

2014年12月9日公開

(その3)の話題としては、まだ重大な課題が残っているのでそのあたりの詳細と解決への取り組みについて紹介する。しかしこれは、カメラとしては根本的な事項であり、解決できなければこのテーマも最終的には失敗ということになるのである。

現在のプロトタイプの課題としては、細かいものは別として2項目ある。

課題1. イメージセンサー位置の調整
今の構造上、イメージセンサ-位置の調整が出来ないということである。現像ソフトでなんとかなるものは置いといて最低限ピント位置の調整については解決せねばならないと考える。

フランジバック

LXミラーボックスとセンサーの位置関係

ファインダーのピント位置とイメージセンサー位置を合わせられないとファインダーを覗く意味がないし、更にレンズに対しても無限遠が出ないことになる。今はLXをバルブに設定し、ライブビューで近景ならピントを合わせることができる。フィルムカメラの焦点面は、ほぼフィルムガイドレール面であるのでこの距離にセンサー面を調整せねばならないが、ミラーボックスのすぐ奥にはシャッター幕があるのでIRフィルタやローパスが干渉しない深さとしては余りクリアランスがないのだ。更にローパスフィルタの高さ方向の寸法がフィルムガイドレールの開ロ高さ寸法より弱冠大きく、レールに当ってそれ以上奥には入れられないことが判明した。つまり今のままではIRフィルタの厚み分しかカメラマウントへ近づけないということだ。焦点面がセンサーの受光面表面であるので、ローパスフィルタ+αの厚み分長くなってしまい、ファインダーでピントを合わせたとしてもセンサー上では焦点はボケることになるという基本的かつ致命的な課題である。

 

 

 

 

 

課題2. LXのシャッタースピードを1/15以上に設定すると撮れない
LXのシャッタースピードを1/15以上に上げると、NEXでは画像が真暗となってしまう。どうやらLXのシャッタースピードを1/15以上に上げると、NEX側の露光開始までにLX側のシャッター動作が完了してしまうのが原因と思われる。試しにNEXの露光開始をLXのシャッターが動作する前になるようにするため、NEX側のシャッターボタンを先に押し、その後LXのシャッターを切る操作をしてみると、LXを最大の1/2000に設定してもそれなりの明るさで撮れることが確認できた。

課題2−1

データバック用信号によるレリーズのタイミング

これはミラーレスであるNEXのレリーズラグが0.1秒程度もあることが原因である。ミラーレス機なので、ライブビューを表示するため通常シャッターが開いている。よって露光を開始する前に一度シャッターを閉じてから開くという動作が加わるからである。このためこのままではLX側では1/8秒(0.125秒)までしか使用できないことになる。但し、1/8、すなわち0.125秒に対しレリーズラグ0.1秒であるので、差分0.025秒しかNEX側は露光できていないことになるので、1/8秒でもNEXでは1/60秒程度の露光時間となってしまう。ー応撮れることは撮れるがタイミングによっては明るさが不安定であった。更に、これは実際に運用するとなるとNEXのシャッターボタンを少々先に押し続いてLXのシャッターボタンを押すというアクロバット的な操作を人が同期を取ることであり、LX側のレリーズでコントロールするという方針に反するため本意ではない。

 

よって、これら2点の課題について検討してみた。

 

PENTAX LX Digitalもどき課題編

これらは難問であるが策が無いわけではないと考えるのだが、少々荒療治となりそうである。どうやら当初の方針を変更し、ボディ側に加工の手を入れる必要が出てきたのである。

課題1については、ボティのフィルムガイドレールかセンサーのローパスフィルタの側面のどちらかを削る方法と、レンズマウントを改造してフランジバック自体を移動するほかないと考える。

削ってはみたものの、あえなく即死

削ってはみたものの、あえなく即死

ボディを削るのは本意に反するためできるならやめたいので、センサーを削るのはできるかもということでルーターで削ってみたが、振動を与えたためかセンサーが動作不良となってしまい再び1台目のNEX-C3を壊してしまうことになった。それで仕方なく次は禁断のボディ削りにトライした。…

予備在庫のC3からセンサーを取り出し交換してみたところIRとローパスはミラーボックス内まで入るようになったが、しかしまだ距離が足りないようだ。センサー全体をミラーボックスに入れられる加工が必要のようであるが、センサーチップサイズは大きく、更にそろそろLXのシャッター幕に触れそうな距離となり、これ以上ミラーボックス内への進入は無理のようだ。

フランジバック2

よってこの件は、ー旦中断することにした。レンズマウントの方をセンサーに近づける検討をするしかないようである。とはいってもこれも難問だ。

課題2については、今期待しているのは電子先幕対応機種へ変更するという手が考えられる。そのために電子先幕対応のNEX-5Nという機種を入手済みである。とはいえ、5Nでさえレリーズラグは公称0.05秒程度なので、シャッタースピードではLXの1/15に対応できるにすぎないのだ。結局根本的な対策を検討しなければならないことになる。LXのシャッター動作の少し前にNEXが露光開始となるのが望ましいのだ。

ということで、LXの仕様を色々調査したところ良い方法が見つかった。LXの場合シャッター半押しで測光回路に電源が入るのであるが、実は押す距離により色々な状態があることが判明した。まず押し込み量0.9mmで測光スイッチがオンとなり、更に0.2mm押しこんでモータドライブのトリガー接点がオン、その後ミラーアップでフォーカルプレーン接点がオンとなるようである。これならモータードライブトリガー信号とフォーカルプレーン信号まで時間差があり、NEXの露光を早めることができる、すなわちNEXのレリーズラグの影響をなくせるのではないかと考えた。幸い、モータドライブ用信号接点は底面ながら標準で出ているので、本体を改造する必要もなく良い方法だと思う。実験する必要があるが、底面から信号を取り出すための新たなコネクタの工作には時間がかかるので、課題1でチャレンジしフィルムガイドレールを削ってしまったLXを実験台として、モータドライブトリガー信号の配線を今のデータバック用信号接点に配線変えして確認してみた。

課題2−2

その結果、とりあえずうまくいった。とりあえずというのは、普通にLXのシャッターを押し込めば大体問題ないのであるが、半押し状態で押し込みを躊躇したりすると、今度はNEXの露光が先に終了してしまう時があるからである。さらに、NEX側のシャッタースピード設定を1/3秒より遅めにしておく必要があるのだが、このスピード時のシャッターメカ動作のギーギー音が顕著なのでなるべく早く動作させたいのだが、、。まあAF音の騒々しいデジカメと似たようなものだと思えば、我慢もできようか。

まあともかく、これで一応課題の一つは解決ということにしよう。