Foveon X3ダイレクトイメージセンサーの画質(その1)

このところ、ポジフィルムの写真撮り、その後NikonD600によるデュープでデジタルデータ化に勤しんでいるためか、他の高価なデジタルカメラの出動回数は減少している。もったいないとの声も聞かれる今日この頃である。
フィルム撮影、ラボへの現像出し、デュープによるデジタルデータ化、PCでの鑑賞という一連のプロセスが今の自分にとっては新鮮で楽しいからであるが、やがてデュープによる画質に不満を持ったことがきっかけでデュープの画質向上ができないかと考え始めたのである。これまではライトボックスでルーペによる鑑賞をしてこなかったので、デュープ後の画質はこんなもんかと気にしていなかったのだが、ライトボックスを入手しルーペでポジを鑑賞してみたのがいけなかった。フイルムに記録された画像、つまり原版は色合いといい解像感といいとてもクリアに感じたのに、デジタルデータにするとかなり画質が劣化していることに気が付いてしまったのだ。ただし、これはPC画面上で100%で表示させた場合の話で、A3サイズ程度のプリントには十分な解像度のはずではあるが。
これについてはデュープ時の操作(主にピント合わせ)やカメラ設定等の最適化でマシにはなるのだが、フルサイズの2400万画素では限界なのかと考えてしまったのである。現にPENTAXのフィルムデュプリケータは各種デジカメを取り付けられる仕様ではあるのだが、もともとは645Zという中判センサー搭載機を想定として発表されているくらいなので、35mmデジカメではポジの再現性能という意味ではそこそこの実力なのかもしれない。
そうはいってもデュープ用のみの用途で約80万もする645Zを購入するには資金不足であり、レンズ調達も視野にいれると今の財力では現実的には不可能である。よって他に手立てはないかと例のごとくネットを調査したところ、デジタル写真としてはポジフィルムのような質感を再現するとう評判のシグマ社のDPメリルシリーズというカメラ(なんとコンパクトデジタルというカテゴリー)に行き当たったのだ。

他のメーカと異なり、シグマが搭載しているFoveonX3ダイレクトイメージセンサーはRGB積層方式で1画素でRGBを受光し情報を得るものであり、ベイヤー配列の通常のイメージセンサーとは異なり受光素子間の空きがなく連続した階調の自然な画像が得られるということだ。積層センサーとベイヤー配列のカラーフィルタによる受光方式のセンサーとの詳細な違いを調べるにつけ、ベイヤーは「あきまへんなー」という気分になり現行所有しているデジカメが色あせて見えてしまう。そこで自分の前職の製品である業務用ドラムスキャナー製品(といっても自分は業界の異なる製品を担当していたので画像処理関係は素人)に携わっていた前出の「師匠」に聞いたところ、スキャナーはまさに色分解の過程で1画素毎にRGBデータを取り込んでいるそうで、精彩なフィルム取り込みには最適な方法ということで、もはやFoveonしか無いのではと溜息が出てしまった。

カメラ自体の評判はともかく(世間では酷評だらけではあるが)、画質面では非常に評判が良い。コンデジなのでレンズの交換はできないが、MerrillのイメージセンサーはAPS-C相当と大型であり解像画素数は約1400万画素(積層なのでトータル画素データ数は約4600万画素)である。中判デジタルを越えた画質などと評価されているようなので、果たしてどのような画を作り出すのか非常に興味が湧いてきており、例のごとく物欲の虫が騒ぎ出すこととなった。とりあえず中古で一台調達してみたのがDP1Merrillという35mm換算で28mmF2.8の単焦点レンズ付きのモデルである。シグマからは同じセンサーを搭載したレンズ交換式も出ているのだが、価格が高く今回は性能確認ということでそこまでの投資は考えないことにした。

DP1Merrill

DP1Merrill

DP1Merrillを実際に手にしてみるとデータ保存の遅さやバッテリーの持ちの悪さは評判通りであらかじめ想定内であったが、ファインダーがないのは今後のことを考えるとチョット頂けない。背面モニターを見て写真を撮るスタイルは自分としては本意ではないからだ。デュープ用途であればまあマシと考えるが、モニターもNikonやPENTAXを見慣れた身にはプアと感じられた。

さて、その評判の画質を検証すべく最終的にはデュープ後の画質で比較したいと考えているのだが、この焦点距離では短すぎてデュープに適さなかったので、結果次第では35mm換算で75mmのマクロ撮影も可能なレンズ搭載機であるDP3Merrillを新規購入するとして、とりあえず今回は通常撮影をすることにした。

今回はここまで、その2につづく